中米料理の特徴について語るためには、カリブ海沿岸のこの地域の歴史的特性について触れておかなければなりません。15世紀の大航海時代から始まったヨーロッパ列強の植民地支配は中米地域にも及びました。もともと中米に住んでいた先住民であるインディオは、スペイン、フランス、イギリスなどによって強制労働に駆り立てられ、また、アフリカからの黒人奴隷も大量に投入されました。
先住民・インディオのトウモロコシ文化、植民地化した側のヨーロッパの食文化、黒人奴隷が持ち込んだアフリカの料理素材などが絡み合って、中米料理が育っていきました。
中米料理で主食とされるのは、米、豆、トウモロコシ、キャッサバなどです。メキシコ料理タコスの具材を包むためにも用いられるトウモロコシの平打ちパン「トルティーヤ」や、タピオカの原料でもあるキャッサバで作ったパン「バミー」などは、先住民・インディオの食文化だと言えるでしょう。
インディオの食文化の軸をなしているトウモロコシは、トルティーヤのほか、ゆでたり、炒めたり、コーンミールという粗挽き粉にして食材を成形したり、コーンスープにしたり、いろいろな調理法で食卓に提供されます。
周囲を取り巻くカリブ海の食材で作ったソルトフィッシュやセビチェのような魚料理もありますが、熱帯性気候の影響下にあるという風土的特性も、中米料理の食材を理解する上で忘れてはなりません。パイナップル、パパイヤなどのトロピカルフルーツが栽培され、飲料や食材として用いられているほか、ラム酒の原料でもあるサトウキビ、調理用の青バナナ「プランテーン」、クローブやナツメグ、ココナッツ等々はアジアから、コーヒー豆はアフリカからそれぞれ持ち込まれ、カリブの気候に適合して定着しました。